パドドゥの為のトレーニング&レッスン

「パドドゥレッスン」についてお問い合わせを頂きましたので、僕がクラスの中でお伝えしたい内容について皆さんとシェアしたいと想います。


まず最初に謝らないといけないことですが、僕はパドドゥを教えません。

それは、履いて一曲も踊ったことのないポワントシューズのレッスンをすることや踊ったことのないヴァリエーションを教えることなどもそうですが、自分が出来ないことをお伝えすることは出来ないからです。

では、クラスで何をお伝えするかというと、パドドゥであれば、自分がダンサーの時に経験し、体験したこと、様々な先生方に教えて頂いたことやトレーナーとしての知識から分析をした上で、パドドゥに必要な身体の強さを作ること、その為のトレーニング方法やバレエのレッスン方法、それによって怪我をしやすい箇所のケアの方法などをお伝えしています。

時にはパドドゥの考え方や男女の役割、作品についてなども解説することもあります。

というわけで、自分でも最初からそのように考えていたことでもありますが、通常のバレエクラス、ジャイロキネシスクラスと同じ内容のことをお伝えしています。

僕自身男性ですし、いつか機会があるならば女性の方にはパドドゥを経験してもらいたいとも想っているので、その準備も兼ねてレッスンではパドドゥの要素も密かにではありますが、取り入れています。

 

パドドゥというのは僕にとってとても大切なものです。

僕自身、大人からバレエを始め、初めてパドドゥを組んだ時はとにかく緊張したものですが、同時にバレエの素晴らしさにも気付くことが出来ました。

パドドゥでは、女性には女性の、男性には男性の役割がはっきりと分かれています。

それぞれにそれぞれの良さを引き立たせながら共に一つの作品を作り上げる喜びは、ソロにはない人間の温かさや優しさに触れ、儚さや強さも知ることが出来ます。

バレエを踊る方にはぜひ一度は体験して頂きたいものでもありますが、パドドゥには知っておかなければならないことがあります。

 

それは「一緒に踊る」ということです。

 

「一緒に踊る」ということはどういうことでしょうか? 

一般には、パドドゥでは、女性一人では出来ないことを、男性がいることで実現出来る。

そう考える方も多いと想います。

僕もそう想います。

ですが、それ以上に大切なことは「一緒に踊る=一緒に歩む」ということです。

 

男性ダンサーがいることで、普段一人で踊っている時には出来ない長時間のバランスや高回転のピルエット、高いジャンプ、その他多くのことが表現できるようになります。

しかし、それは自立した女性ダンサーの存在があってはじめて実現の出来ることです。

つい男性に甘え、一人では立てないポワントを立たせてもらい、一人では出来ないピルエットを回らせてもらえ、一人では出来ないジャンプを高く上げてもらう。

そのようなことは「自分では何も出来ない」ということを観に来てくださった皆さんにアピールしているようなものです。

自転車で例えるなら「補助輪無しでは運転出来ない」ということと同じです。

それでは一緒に「歩む」ということにはなっていません。

なぜなら、男性の役割は補助輪ではないからです。

 

「一緒に歩む」とは、お互いが自立したダンサーとして存在をし、それぞれの足で共に道を進んで行くことに他なりません。

その中で、一人では到達出来ない場所へ、お互いが助け合い、ベストを尽くし、歩んでいくことなのだと想います。

そうした時、一緒に踊ることの素晴らしさ、感動が人々の元へと届けられるのだと信じています。

ですので、まず何よりも出来なければならないのは、自分で自分の自転車を漕ぐ技術の習得をするように、自立した一人のダンサーとしてしっかり存在出来るようにレッスンを重ねること、基礎力を上げることが大切です。

 

原宿バレエスタジオをはじめ、各スタジオでのレッスン、プライベートレッスンでは、自立したダンサーになってもらえるようクラスを行っています。

気持ち良く身体を使うことはもちろんお伝えしたいことですが、踊りを見ていてすぐにでも怪我をするんじゃないかというような誰かに心配されるような踊り方ではなく、しっかり自分の力で大地を踏みしめているような踊り方が出来るようお伝えしていきたいです。

 

人生の中でそう何度も何度もパドドゥを踊れるわけではないことも現実ですし、せっかくの貴重な機会ですので、男性ダンサーやスタジオにお金を払えば何でもしてもらえるような甘えたパドドゥではなく、ちゃんと自立をし、お互いの役割をしっかりと演じた上で、自信を持ってパドドゥを踊れるようになってもらえたらと願っています。