いつでもゼロから
身体のことを勉強し、お伝えするようになった時に初めて気付いたこと。
とっても当たり前のことではあるのですが、ダンサーをしていた時は忘れていた、そして気付けなかったことでした。
それは「毎回身体のコンディションをゼロの状態に戻し、毎回ゼロから始める」ということ。
毎日毎日レッスンにリハーサルに舞台にと、身体を酷使していく中で、もっと上手になりたい、もっと良いパフォーマンスをしたいという想いの他にももう一つ、痛めた足や膝、腰の心配をしながら踊ることも多くなっていきます。
時には毎日が痛みとの闘いでもあります。
「痛みのない身体」
そんな身体があったこともいつしか想い出せなくなり、この先の将来にもそんな身体があるのかどうかもわからない状態で日々を過ごしていくと、だんだんと捉えようのない不安に襲われるようになっていきます。
身体の不安は同時に心の不安でもあるのです。
痛みがある為にレッスンや日常の生活でも騙し騙しの日々。
「踊ることを止めたら治るだろう」
いつしかそんな現実のようで決して現実ではない考えが浮かんできます。
そうやって自分を騙しながら、今の自分を納得させながら過ごしているダンサーの方も多いでしょう。
「踊ることを止める」
そんな日が来るのか、実際にそんな日が来ても良いのか。
そして、身体を酷使していくことで、その日が突然にやってくることもあります。
「痛みもなく、不安もない身体」
痛みがあり、不安のあるマイナスの身体から見るとそれはプラスに感じるかも知れません。
でも本当はそれがゼロの状態です。
それがゼロの状態だということを忘れてしまうのです。
ゼロの状態はマイナスの身体から見ると、もうそれは宝くじにでも当たったような、その時の自分からするととてつもない幸せが訪れたような状態です。
誰もが痛みのない身体を欲していると想います。
でも、それはゼロの状態です。
何もないゼロの状態。
当たり前にしていかなければならない状態のことです。
本来考えなければならないのは、ゼロから身体をさらに良くするプラスの状態に持っていくことではないでしょうか。
痛みのない、不安のない身体を使って、さらなる目標に向けて身体を使っていくことこそ、本来目指しているものではないでしょうか。
レッスンやリハーサル、舞台を行えば必ず身体は傷つきマイナスの状態になっていきます。
芸術、少なくともクラシックバレエは健康の為にあるわけではないので、それは仕方がないことです。
傷ついた身体、マイナスになってしまった身体を毎回しっかりと元の状態、ゼロの状態に戻すこと。
それがボディコンディショニングです。
そのゼロの身体を使ってもっと良い状態にすることをトレーニングと言います。
身体という素晴らしい楽器を、いつまでも美しく奏でる為に、調律や調整をする時間を必ず取ってください。
大切なことは時間をかけるかかけないかではありません。
心に余裕を持てるかどうか、スペースを開けられるかどうかです。
まずはそこから始めてみましょう。