バレエ教師という仕事

バレエ教師という仕事。

出逢いであり、別れであること。

一人一人のことを一日中考え続けている仕事。

その人の夢を叶えたくて、形にしてあげたくてその場を過ごすけれど、

それを形に出来るのは一人一人の力でしかないということを知っていること。

その為に多くの時間を使い、心を使っていること。

けれど、結局は何もしてあげられないこと。

 

基本的に生死に関係のない距離にいて、好き勝手で我儘で、何の生産性もない非力な仕事。

誰かの人生にとって、その瞬間にとって何かでありたい、何かであって欲しい、何かであれたならと願うけれど、本当に現実にはとても非力な仕事。

 

自分の年齢、実力、経験、その他多くのことを棚に上げて、それでも教師という立場をやりくりし、何とかその時間を乗り越え、けれど帰り道では反省し、大して何もない自信も無くし、それでも明日のその時間に向かって自分とそこに集まってくださる方々を想い、気持ちを高め、寝て起きて、何年経っても消えることもない不安と緊張を抱え、挑む日々。

 

 

教師と生徒。

それはプロレスのような建前の関係。

そんなものは本当に建前で、結局は人と人。

人間と人間の想いだけがそこにあって、一人一人が何かになりたくて、何かでいたくて、何かを得たくてそこにいる。

それを一緒に作っていく場がレッスンであり、そこに向き合い高めようと切磋琢磨するのが稽古場であり、そこには余計なものは何にもいらない。

鏡と自分、音楽と自分、もうひとつの鏡としての存在(教師)がいるだけ。

お互いに余計なものは何もいらない。

昨日より、前回より、どうだったか。

明日に期待出来るかどうか。

ただそれだけ。

それを失ったら最後、破綻していくのみ。

そういった意味での信頼関係があるかどうか。

それを作れたかどうか。

どちらか一方でもなくお互いに。

 

いつだって想いをその場に残して去っていく。

教師はそれをいつまでも抱えながら稽古場に立ち続ける。

今日も明日も明後日も。

 

いつ帰って来ても良いように日々準備しつつ、

最後は祈ったり願ったりすることくらいしか残されていない。

 

教師もまた、孤独であること。

だからこそ、そこに人が居てくれることが救いであり、生きがいであり、感謝であること。

 

力の及ばない場所では無力ではあるけれど、少なくともそこに集まる全ての人が幸せでありますように。

そのお手伝いが出来ますように。